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メールマーケティングで深度のある関係性を構築

週刊トラベルジャーナル誌 週刊トラベルジャーナル誌 執筆・鶴本浩司

『受信トレイ舞台にコミュニケーション』


ウェブサイト(ホームページ)でどれほど魅力的に表現したとしても、ブラウザを閉じた瞬間に断線してしまうが、一方でメールは削除されない限りユーザーとつながったままだ。さらに深度のある関係性を構築するにも効果的だ。今回はメールマーケティングのポイントを解説する。


インターネットが普及して、日々の生活だけでなく仕事の流れも変わった。毎朝オフィスに到着してまずは受信メールのチェックからという読者も多いだろう。仕事の進め方も、メールのやりとりを軸にするケースも少なくない。
 メールは信書が行き交う、受信トレイという空間を舞台とした、プライベート性の高いコミュニケーションだ。ウェブサイト(ホームページ)の場合はユーザーが能動的にアクセスしなければならないというプル型のメディアなのに対して、メールはユーザーの受信トレイに届けられる。そんなコミュニケーションチャネルにマーケティングを取り入れたのがメールマーケティングだ。


 メールマーケティングとは、メールを活用したマーケティング技法の総称である。よくメールマガジン(メルマガ)と同義と思われがちだが、実際にはメルマガはメールがもつマーケティング機能の一部でしかない。むしろ、メルマガ以外のほうがメールがもつ本来のマーケティング力を発揮していることも少なくない。


受信するけど読んでない
 とはいえ、メルマガがメールマーケティングで大きな役割を果たしているのも事実。それでは、ユーザーはどの程度、メールマガジンと接点をもっているのかを数字でみてみよう。なお、今回はパソコン(PC)でのメールコミュニケーションに焦点を当てて記述する。


図1 メールマガジン(メルマガ)登録率 まずメールマガジンの登録状況をみると、95.2%で、ほとんどのユーザーが何らかのメールマガジンに登録しているといっていい(図1)。では、いくつぐらい登録しているかをみてみよう(図2)。4通以上登録しているのは75%だ。20を超えるメルマガを登録しているユーザーも約1割いる。それに対してよく読むメルマガの数を聞いてみると、65%は「よく読むのは3通以下」と回答している。ここから言えるのは、自らメルマガに登録しておきながら、読んでいないメールが少なくないということだ。


図2 登録しているメルマガ数と、よく読むメルマガ数


読まれるためには
では、どうすれば読まれるメールになるのか。この点は日経ネットマーケティング誌の調査結果が参考になる。同調査によると、トップは「自分の興味・関心事にピッタリの情報が書かれている」がダントツで55.8%であった。以下、2位「割引クーポンが付いている」30.5%、3位「件名や見出しが魅力的でついつい読んでしまう」27.7%、4位「発行元企業・ショップまたはそこが取り扱う商品が好き」24.2%、5位「小話が面白い、豆知識が役に立つ」20.7%、「写
真、画像などビジュアルが美しい」12.3%と続く。 ここからユーザーのメルマガに対するトレンドを読み解いていこう。まずユーザーは、メルマガにコンテンツを求めているということだ。メルマガをウェブサイトへ誘導するためだけの装置と割り切る技法もあるが、それだけではもったいない。メールはウェブサイトと異なり保存性もあるので、そのあたりを生かしたい。


 また、「発行元企業やそこが取り扱う商品が好き」というのも注目に値する。前回の本稿で述べた「顧客エンゲージメント」に直結するポイントだ。ツーリズムに当てはめて考えると、旅行会社やデスティネーションなど、ユーザーによって愛着をもつ対象はさまざまだが、エンゲージしていればそのメルマガは読まれる。なお「写真、画像などビジュアルが美しい」を挙げたのは1割程度。画像を用いた高い表現力のHTML メールで配信するか、通常の信書
で馴染みのあるテキストメールで配信するかは悩むところだが、いずれにしてもまずはコンテンツありき、である。
 メールはコミュニケーションを重ねることでさらに関係性を高めやすくなるが、なかでも旅行の場合はその機会が多い。旅行会社での予約を例に挙げて考えてみよう。まず予約・購入が完了した時点での確認メール(トランザクションメール)がある。郵送資料の必要があれば、発送時にその旨をメールで通知し、到着したと思われる数日後には「お手元に届きましたでしょうか?」といった確認メールもある。さらに出発前日には現地の気候と服装の
助言メールもユーザーにとっては価値があるし、帰国後には「おかえりなさい」メールで改めてお礼メールを出すのもいい。この一連のコミュニケーションを手間と思うか、エンゲージした顧客を創造するための企業努力ととらえるかは、将来に対する考え方にもつながるように感じる。


改正迷惑メール法もチェックを
ところでメールマーケティングを実践するにあたっては、通称「特定電子メール法」には注意を払いたい。同法は08年12月に改正されたが、その主なポイントは、広告・宣伝メールは「事前に本人の許諾を得ること(オプトイン)」が義務づけられたことだ。つまり事前同意なしでは送信できないのである。だからたとえば、資料請求やアンケート記入の際に記してもらったメールアドレスは、その書面上や画面上でメール配信の同意を得ていなければ、広告
メールを送信することはできない。イベント会場などで登録者を募る際には、ユーザーから明確に許諾を得たい。なお、今回の法改正で、違反の場合の罰金は一気に3000万円に引き上げられた。


 ちなみにトレードショーなどで名刺交換した相手へのメール送信についても述べておく。名刺交換はそもそもビジネスにおけるやりとりが前提にある。受信拒否が明示されてない限り広告メールを送信することは可能だ。ただ、その場合も配信停止の手続きの手順は明示しなければならない。また不信感を与えないために、文頭で「このメールは以前に名刺交換やイベントでお名刺をいただいた方にお送りしています。配信停止は文末をご覧ください」といった文章を添えておくといい。


図3 迷惑メール防止法の主なポイント


(2009年4月27日号掲載)


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